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2010年11月

4.住警器共同購入等の事例紹介 ~第4回~

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 住警器の普及において、特に集合住宅においては、管理組合や自治会といった組織が中心となり設置を進めることで、設置率向上に大きな効果を上げているケースが見られます。 今回は、1,300戸以上が入居する大規模な集合住宅において、管理組合が主体となり設置を進めることで、設置率100%を達成した事例を紹介します。

(総務省消防庁「消防の動き 2010年10月号」より)


(1)地域・取組み主体の概要

 なぎさニュータウンは、7つの棟に1,324戸、約3,800人が居住する大規模な集合住宅である。なぎさニュータウン管理組合は、昭和52年の第1次入居と同時に区分所有者によって設立され、建物・設備等の自主管理を行っている。自治会とともに設置した「なぎさ防災会」は都市部のマンションには珍しい自主防災組織として活躍しており、管理組合や葛西消防署等との関係機関と連携して防災計画を進めている。

(2)共同購入の取組概要

 消防法の改正に伴い平成18年から住警器の設置義務化が開始されたことを受け、直ちに全戸への設置推進の検討を開始した。管理費から予算を確保し、必要設置数の調査等を経て、平成20年に必要な住居への配布を行った。 配布にあたっては、11階以上等、既に自動火災報知設備等が設置済であった区画を除き、809戸を対象に実施。希望した入居者には設置の支援も行い、100%の設置(空室・長期不在の住居を除く)を実現した。


取組主体:
人数等:
消防署等:
職員数:
地域:
人口/世帯数:

キーワード:
なぎさニュータウン管理組合
1,324戸、約3,800人が居住
葛西消防署
183人
江戸川区(特別区)
65万3,944人/28万1,705世帯
●広報・周知(掲示物・配布物、説明会)
●共同購入
●購入補助(会費等からの支出)
●設置支援
普及期
平成18年6月
管理組合の理事会・委員会において予算化実施
工夫点
①地域における日ごろからの防災意識啓発
展開期
平成20年3月
共同購入した住警器の配布・設置
工夫点
②共同購入による住警器の安価な購入
③丁寧な調査による必要個数確認
④希望者への設置支援
⑤配布時の説明会実施
⑥聴覚障害者に補助警報装置の斡旋

(3)工夫点の紹介

工夫点①:地域における日頃からの防災意識啓発
●実施内容
 なぎさニュータウンにおいては、日頃より、地域全体で防災意識啓発の活動を行っている。管理組合のほかにも、阪神・淡路大震災を機に自主的に組織された「なぎさ防災会」があり、有志で集まった約140名の住民により、災害時のシミュレーションを行う訓練、キタコン(帰宅困難者体験)ウォーク、お祭りを通した啓発活動等、防災に関する積極的な意識啓発活動を行っている。
 こうした高い防災意識を持って日頃より活動している背景もあることから、管理組合の理事会・委員会において住警器の予算化について検討を行った際も、スムーズに導入の意思決定を行うことができた。
●ポイント
 住警器の設置においては、何らかの形で入居者が費用負担をしなければならないケースがほとんどであり、普及促進における障害のひとつとなっている。入居者が出費し、住警器の購入・設置を行う行動に至るためには、入居者の高い防災意識が不可欠である。この事例においては、事前に拠出された管理費からの購入であるが、スムーズに意思決定が行えた背景には、日頃からの防災意識啓発の働きかけによるところが大きい。また、11階以上の居室においては既に自動火災報知設備等が設置されており、その点検・保守費用は管理費から支出されていることから、公平性の面からも管理費での購入となった。
 また、この事例においては、導入の意思決定及び住民への広報が早かったため、自主的に購入した住民がなく、全体的にスムーズに設置が進められた。早く取組を開始する際には、情報が少ない等の困難が伴う一方、この事例のように取組の舵取りが行いやすいというメリットがある。

工夫点②:共同購入による住警器の安価な購入
●実施内容
 管理組合が主体となり、共同購入による住警器の安価な提供を実施した。住警器単体の価格だけでなく、設置費用も含めて低価格の業者の選定を行った。
●ポイント
 購入価格については、他の事例と同様、取りまとめて大量購入を行うことにより、一台あたりの購入価格を抑えている。
 また、この事例では、設置支援の希望者を募った結果、73.4%の入居者が申込みを行った。そのため設置費用も含めた価格で業者選定を行ったことが功を奏し、全体的な購入費用の抑制に成功している。

工夫点③:丁寧な調査による必要個数確認
●実施内容
 物件ごとの必要設置個数を把握するため、調査票による調査を実施した。各部屋の間取りは管理組合で入手可能な資料である程度把握できるものの、リフォーム等で間取りが変更になっているケースもあり、設置対象の居住者に、自宅に必要な個数を計算して頂いた。当初は返答のない入居者も存在したが、粘り強く何度も依頼を実施し、調査票の回収を行った。
●ポイント
 共同購入において、各戸の必要設置個数の見積りは大きな課題のひとつといえるが、この事例においては、調査票に必要個数を記入して提出して頂く方法により、それぞれの住居における必要設置数の把握を行っている。調査票では、「3LDKの場合、4個」といったように、住警器の必要設置数を分かりやすく理解できるよう、工夫が施されている。

工夫点④:希望者への設置支援
●実施内容
 設置を希望する入居者へ対しては、住警器の販売業者による、取付けの実施も行った。
●ポイント
 住警器は、設置が必要な箇所が決められており、かつ、比較的高所につけなければならない等の背景から、共同購入・配布後に設置されず放置されてしまうといった懸念がある。そのため、この事例のように設置までをフォローすることは、重要な取組であるといえる。

工夫点⑤:配布時の説明会実施
●実施内容
 各入居者へは、説明会に集まって頂いた場で、住警器の配布を行った。説明会には住警器のメーカーからも講師を派遣頂き、住警器の使用方法や必要性、メリット等についての説明を実施した。
●ポイント
 配布した住警器が実際に活用されるためには、使用方法等についても、しっかりと周知されることが重要である。この事例においては、配布時に説明会を実施し、入居者の知識・意識の底上げを図っており、非常に効果的な取組であると考えられる。
また、説明会の内容については、「管理組合ニュース」にも掲載され、各入居者に配布された。

工夫点⑥:聴覚障がい者用に補助警報装置の斡旋
●実施内容
 住警器配布を進める中で、聴覚障がい者への対応が課題として浮かび上がった。そのため、追加の対策として、ストロボライトによる補助警報装置の斡旋も実施。3件の問い合わせがあり、そのうち1人が実際に設置を行った。
●ポイント
 一般的な住警器は、音による警報がメインであり、聴覚に障がいがある方については発光による補助警報装置等の設置により、警報に気づく対応が必要となるケースがある。
特別な配線が必要な点や、一般的なものよりも高額である点など、普及については課題も多いが、こうした対応についても丁寧に進めることが、火災による被害低減には重要となる。

(4)その他のポイント等

●積極的な広報・条例の確認
 東京都の条例では、住宅の寝室や階段のほかにも、寝室以外の居室や台所への住警器設置が義務付けられている。この事例においては、平成18年の時点で一度予算が承認されたが、その際は東京都の条例ではなく「住宅の寝室や階段」の基準で見積もっていたため、次年度に再度予算の取り直しが必要となった。
 条例改正後、早い段階での取組開始であったため情報が少なかったことが、このように活動の妨げになるケースがある。普及促進の際は、設置基準の積極的な広報や、条例の確認等が重要であるといえる。


 次回は、補助金制度を活用し自治会等を通じて住警器の100%設置を達成した「補助金制度による自治体内100%設置(取組主体:檜原村安全・安心むらづくり協議会(東京都檜原村))」を紹介します。
 なお、本ノウハウ集は消防庁ホームページ(住宅防火情報)でもご覧いただけますので、参考としてください。〈リンク先〉http://www.fdma.go.jp/html/life/juukei.html

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